以前、裁量労働制の拡大に伴い国会がざわつき、連日ニュースにも取り上げられました。
(厚生労働省のデータが不適切だったため、「裁量労働制の拡大」については取り下げられています)
この、裁量労働制ですがIT業界でも採用している企業が往々にしてあります。
筆者も以前、裁量労働制を採用しているITアウトソーシングをビジネスの主体としている会社で働いていました。
その経験を基にIT企業の裁量労働制についてお話します。
そもそも裁量労働制って?
Wikipediaからの引用文です。
裁量労働制は労働基準法の定めるみなし労働時間制のひとつとして位置づけられており、この制度が適用された場合、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなされる。業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務に適用できる。
適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されており、「専門業務型」と「企画業務型」がある。導入に際しては、労使双方の合意(専門業務型では労使協定の締結、企画業務型では労使委員会の決議)と事業場所轄の労働基準監督署長への届け出が必要である。
噛み砕いて説明します。
裁量労働制の特徴
裁量労働制には大きく、以下の特徴があります。
- 予め労働時間をみなしで決定する
- 勤務時間は自由
- 専門性の高い業務に認められる
予め労働時間をみなしで決定する
一般的な給与制度は実際の労働時間に対して報酬が発生しますが、裁量労働制の場合は予めみなしで労働時間を取り決め、みなし労働時間に対し報酬が発生します。
契約で労働時間を1日8時間とした場合、3時間でも12時間の労働でも発生する報酬は8時間分になります。
従って、時間外労働に対する割増賃金が発生しません。
ただし、休日手当てや深夜手当(22:00~5:00)は割増賃金が発生します。
勤務・労働時間が自由
裁量労働制の場合、時間の管理も自身の裁量で行います。
そのため、出退勤の時間を縛られず、労働時間も自身で管理します。
専門性の高い業務に認められる
厚生労働省は裁量労働制を適用できる業務を「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つに分類しています。
専門業務型裁量労働制
業務の性質上、業務の方法や時間配分を労働者にゆだねる必要がある業務に関して裁量労働制を採用できます。
以下のような業種が該当します。
- 研究開発
- 情報処理システム(設計・分析)
- 取材・編集
- デザイナー(衣服、室内装飾、工業製品、広告)
- テレビ、映画のプロデューサー・ディレクター
- コピーライター
- システムコンサルタント
- インテリアコーディネーター
- ゲーム用ソフトウェアの開発
- 証券アナリスト
- 金融商品の開発
- 大学の教授研究
- 公認会計士の
- 弁護士
- 建築士
- 不動産鑑定士
- 弁理士
- 税理士
- 中小企業診断士
企画業務型裁量労働制
裁量労働制の中でも本社や本店での企画・立案業務など、一定範囲のホワイトカラー労働者を対象に採用できます。
ITアウトソーシング企業における裁量労働制
ITアウトソーシングをビジネスの主体としている企業で、裁量労働制を採用している会社について言及します。
みなし労働時間について
裁量労働制が採用されているITアウトソーシング企業は、予め労働時間がみなされているということはほとんどありません。
派遣先から割り振られる仕事により労働時間は左右しますので、労働者に裁量権はありません。
また、ITアウトソーシング企業との雇用契約には、明確に時間が決められていることが多いです。
具体的には、「1ヶ月の労働時間が140時間を下回ると下回った時間分を減給とする」などです。
計算式も就業規則に明記されています。
つまり、残業代は支払わないのは当然で、たくさん休んだら減給されます
勤務時間について
出退勤の時間や勤務時間も派遣先の就労形態に合わせる形になります。
基本的には9:00~18:00の定時制の企業が多いですが、9:00~17:30や11:00~20:00など派遣先により異なります。
裁量労働制だからといってたくさん休んだり遅刻するなど勤怠が悪いと、派遣先から所属会社へクレームがいきます。
その後、所属会社から労働者へ指導が入ります。
もちろん評価にも関わるので給与も上がり辛くなります。
そもそも、派遣元と派遣先の契約が時間契約なので裁量権を行使する機会がないのです。
よって、労働者の裁量権は1ミリもありません。
ITアウトソーシング企業に裁量労働制が採用される妥当性
断言します。皆無です。
上記の通り、専門業種にも該当せず裁量権もないのですから当然ですよね。
顧問弁護士と相談して法の抜け目をうまく突いていた上で採用しているのでしょう。
とは言え、企業側にも裁量労働制である様々な理由があるのも事実です。
例えば、小規模企業で資金力がなかったり、企業拡大のための資金確保だったりが推測できます。
それにしても労働者側が享受できる恩恵は少ないですね。
まとめ
筆者が身を置いていた会社でも、開発系やインフラ系をはじめ様々な部署がありましたが、裁量労働制を採用できるような業務はありませんでした。
少なくとも筆者はネットワークの運用・保守・構築といった業務に従事していましたので、裁量労働制が適用できないはずの業種となります。
派遣先により労働時間に差はありますが、基本は月に20~30時間の残業が発生します。
多い所で、約80時間の残業が続くこともありました。
また、携帯電話を貸与され、障害発生時などの緊急対応をしなきゃいけない派遣先もあります。
深夜や休日に電話が鳴り響き、対応を余儀なくされることがザラです。
微々たる深夜・休日手当ては支給されますが、残業代が出ることは当然ありません。
従って、ITアウトソーシング企業で裁量労働制を採用している企業の場合は、特別な理由がない限り就職・転職をおすすめしません。
特別な理由とは、例えば・・・
”28歳までフリーターをしていて社会人経験が乏しいため、どんな会社でもいいので入社したい。”
など明確な理由があれば転職するにも一考の余地があります。
中小企業やベンチャーが多いので入りやすいのは確かです。
ただし、数年働きスキルを身に付けたたら、転職することを前提での入社をおすすめします。
ステップアップに使いましょう。
ともあれ、今は人手不足で売り手市場ですので、選べる余地は十分にあります。
自身の経験とスキルを考慮し、慎重に就職・転職先を決めましょう。
ITアウトソーシング企業に就職・転職するメリデメなどはコチラの記事も参考にしてください。